若手研究者PROFILE 2023_11
61/74

今後の見通しがん臨床サンプルの解析からがん再発機構とエンハンサー機能の不均一性との関連を明らかにする■研究ポリシーこれまでの大学院での研究活動を通して、医学のエキスパートと情報科学のエキスパートが集まるだけでは、医学と情報科学が融合した研究は成立せず、その両者の言葉を翻訳して橋渡しするリーダーが必要になるということを学びました。今後そのような異分野の橋渡しをするような研究者として、AI・機械学習の手法を用いつつ自分のバックグラウンドである血液腫瘍学、特に急性骨髄性白血病の再発機構の解明に寄与するような研究がしたいと考えています。59これまでの解析で畳み込みニューラルネットワークという手法を用いて一部の遺伝子の発現をATAC-seq情報から一細胞レベルで予測することが可能になりつつあります(FIGURE 2)。また予測に重要とAIが判断した領域には既存の研究で実験的に指摘されているエンハンサー領域が含まれており(FIGURE 3)、AIを用いたエンハンサー活性予測の有用性を示唆する結果と考えられます。現在はAI用のスーパーコンピュータを用いて、ゲノムワイドに一細胞予測が可能なニューラルネットワークの構築を行っています。安定した手法の構築ができれば、実際にがん患者さんの検体を用いて、がん組織のエンハンサー活性の不均一性ががんの再発などの病態にどのような影響を与えるのかを明らかにしていくことを目指しています。FIGURE 1:研究の概略図。ゲノム上のオープン領域を検出するATAC-seqからRNA-seq(遺伝子発現)をAIを用いて予測し、その後AIが予測するのに重要と判断した領域をエンハンサー領域として検出する。FIGURE 2:ニューラルネットワークで予測されたMYC遺伝子の発現。横軸:予測した遺伝子発現、縦軸:真の遺伝子発現。一つのドットが一つのサンプルを表す。FIGURE 3:Grad-CAMにより予測されるエンハンサー領域。Grad-CAMスコアが高い領域に既存データベースのエンハンサー領域(FAMTOM5)を含む。上二段:ATAC-seqシグナル、三段目:Grad-CAMスコア、四段目:FANTOM5エンハンサーiFremed Integrated Frontier Research for Medical Science Division

元のページ  ../index.html#61

このブックを見る