今後の見通し「分子病態分類同定」、「患者包括的生体分子情報に基づく基礎研究」、「治療効果視覚化」をビジョンとする■研究ポリシー私は大阪大学大学院に入学するまで、重症患者を中心とした急性期医療に従事していました。大学院で敗血症や外傷の基礎研究を行った後、アムステルダム大学附属病院にて、敗血症に関するトランスラショナルリサーチを行いました。留学先での経験を基に立ち上げたのが、急性期ゲノムプロジェクトです(Figure1)。同プロジェクトでは、重症患者の包括的な生体分子情報としてDNA(ゲノム)、RNA(トランスクプリトーム)、蛋白(プロテオーム)、代謝産物(メタボローム)を評価しています。57ます(Tom van der Poll et al. 2021. Immunity)。課題2に対して、再現性と臨床応用性の高い研究を行うため、まず重症患者の包括的な生体分子情報から表現型を同定し、その後に基礎実験を行う研究フローが必要と考えています。急性期ゲノムプロジェクトには3つのビジョンがあります(FIGURE 2)。ビジョン1は、課題1の解決のために急性期疾患における新規分子病態分類を同定することです。具体例として、当プロジェクトでは血中プロテオーム解析から重症COVID19患者における4つの主要血中蛋白を同定し、予後の異なる新規分子病態分類を明らかにしました。ビジョン2は、課題2の解決のために重症患者の包括的生体分子情報に基づいた基礎研究を行うことです。当プロジェクトでは、重症COVID19患者における全血mRNA/miRNA統合解析から主要シグナル(IFNシグナル)と、同シグナルに関連する制御因子を同定しました。これらは基礎研究で創薬に繋がる可能性があります。ビジョン3は、開発した薬の治療効果を包括的生体分子情報で視覚化することです。これから、メカニズム解析を包括した質の高い臨床研究が可能となります。FIGURE 1:急性期ゲノムプロジェクト:(大阪大学附属病院 高度救命センター ホームページより抜粋: http://www.osaka-u-taccc.com/occonomix/index.html)FIGURE 2:臨床基盤型トランスラショナルリサーチ:急性期疾患(敗血症、外傷など)における基礎・臨床研究を融合した研究プラットフォームとして、急性期ゲノムプロジェクトを立ち上げた。FIGURE 3:急性期ゲノムバンク:急性期疾患に臨床検体として血液を中心として、尿、髄液、喀痰、便等を保存している。これらの臨床検体は、バーコードでラベリング後に冷凍保存している。iFremed Integrated Frontier Research for Medical Science Division
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