今後の見通し研究成果を社会還元し慢性肝疾患患者さんに新たな治療薬・診断薬を提供したい■研究ポリシー臨床的な疑問を大切にして研究を立案し、培養細胞やマウスモデルだけでなく臨床検体も積極的に活用して、常に研究成果の臨床応用を念頭に置いて研究を進めています。また、基礎的な研究成果を実臨床応用するための研究や臨床試験も、積極的に進めたいと考えています。一方、すぐには臨床応用に直結しないような研究でも、分子学的に詳細に病態を解明することは将来必ず臨床に結び付くと考えています。長期的な視点での臨床応用を見据えて、分子学的機序を緻密に検討することも大切にしています。慢性肝疾患の原因は肝炎ウイルスに起因するものから、非アルコール性脂肪性肝疾患やアルコール性肝障害のように生活習慣に起因するものまで多岐にわたっています。しかし、原因によらずすべての慢性肝疾患では肝細胞死がおこり肝臓が固くなり、肝がんに進行します。私たちは研究で見出した新規機序をもとに、慢性肝疾患の病態が進行するのを抑制する治療の開発につなげられないかと考えています。一方、肝がん患者に対しては、GDF15、IL-6ファミリーサイトカイン、CTGFなどの分子に対する阻害剤などを用いて、がん微小環境を治療標的とした新たな治療法の開発につなげたいと考えています。また、今では約4人に1人が非アルコール性脂肪性肝疾患ですが、肝発がん率は0.1%未満と少なく、すべての患者さんに対して、腹部超音波検査などで肝がんのスクリーニングを行うことはコスト的にも人材的にも負担が大きすぎます。発見した、血清GDF15などを肝発がん高リスク患者絞り込みの新規バイオマーカーとして用いて、効率的な肝がん早期発見スクリーニング法を確立することを目指しています。FIGURE 1:肝細胞死を起点とした慢性肝疾患の病態進展機序(論文1他):慢性肝疾患では肝細胞死が持続する。肝細胞死の持続は、酸化ストレスやケモカインを介して、肝線維化や肝発がんを誘導する。FIGURE 2:肝細胞のp53活性化による肝発がん誘導機序(論文2):慢性肝疾患で認める肝細胞のp53持続活性化により、肝内に炎症が惹起され、肝前駆細胞が出現して癌細胞に変化し、肝発がんを誘導する。FIGURE 3:肝がん細胞と肝星細胞の相互作用による肝がん進展機序(論文3):肝がん細胞は肝星細胞のオートファジーを亢進させ、肝星細胞からGDF15を放出させる。このGDF15は肝がん細胞の増殖を促進させる。45iFremed Integrated Frontier Research for Medical Science Division
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