今後の見通し新規解析技術の開発、疾患関連微生物の機能解析、そして治療・診断技術への応用■研究ポリシー生体内の特定の機能分子に着目して,網羅的に解析・研究する学問を総称してオミクス(omics)と呼びますが、当教室では様々なオミクス解析技術を用いて、疾患にアプローチしています。今回ご紹介した腸内微生物叢データだけではなく、ゲノム、トランスクリプトーム、メタボロームなど、様々なオミクスデータを扱っています。当教室の研究の大きな特徴として、様々な教室と共同研究を行なっていることが挙げられます。引き続き、様々な専門分野の先生方と一緒に、医療に資する研究に取り組んでいく所存です。37では腸内ウイルスの解析技術を独自に開発いたしました1)(FIGURE 3)。腸内微生物叢のまだ見えていない側面を見えるようにする技術を世界に先駆けて開発・実装できることが当教室の強みだと考えています。当教室で開発した開発技術によって、細菌・ウイルスなど、腸内微生物叢の全貌に迫ることができるようになってきました。しかしながら、まだ未解明の部分はありますし、今見えている部分をもっと細かく見ることでさらに腸内微生物-疾患間の関連について理解が深まるだろうと考えています。よって、引き続き、新規解析技術の開発・実装に取り組むことが必要であると考えています。腸内微生物叢研究における目標の1つは、疾患関連微生物をバイオマーカーや治療標的として利用できるようにすることだと考えています。これまでに、多くの微生物–疾患間の関連を見出してきましたが、これらの成果を社会実装する上で、詳細な分子メカニズムの解明は必要不可欠なステップだと考えています。他研究室との共同研究によってこの課題に取り組み、研究成果の社会実装を推し進めたいと考えています。FIGURE 1:メタゲノムショットガンシークエンスの概要。ヒトの便サンプルからDNAを抽出し、次世代シーケンサーを用いてゲノム配列情報を取得する。FIGURE 2:腸内細菌叢解析の例2)。健常者(HC)と全身性エリテマトーデス患者(SLE)の腸内細菌叢の比較を行なった他、ゲノムデータや血中代謝物データとの統合解析も行なった。FIGURE 3:腸内ウイルス叢解析の例1)。自己免疫疾患患者を含む476名について、腸内ウイルス量のケース・コントロール比較やウイルス・細菌相互作用解析を行った。iFremed Integrated Frontier Research for Medical Science Division
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