今後の見通し創薬や診断といった臨床現場への活用を目指して、より詳細な分子メカニズムへ■研究ポリシー次世代シーケンサーに代表されるような生体測定技術の進歩と、スーパーコンピューターに代表されるような計算機の発展に伴い、昨今では世界中から新規の生物学的データが日々、大量に取得・公開されています。これらの多岐にわたるデータを、疾患ゲノム情報を軸として統合していくことで、病気の発症や予後を規定するメカニズムに迫ることができると考えています。つねに新しいデータや技術にキャッチアップすると共に、医学の進歩に貢献できるような活用の方法がないか考え続けることを重視しています。35症化に関わるゲノム上の13領域が明らかになりました(FIGURE 2)。特にCOVID-19のような不明な点の多い病気では、発症に関わる遺伝子を突き止めることで病態解明への貢献が期待されます。ゲノムワイド関連解析はこの20年で数多くの形質について実施され、数万もの関連領域が同定されてきました1)。一方で、同定されたゲノム領域の知見を、臨床現場での診断や治療に活用しきれているとは言い難い現状があります。このギャップを埋める第一歩として、同定された領域が、いつ、どの細胞で、どのように作用することで形質に影響するのか突き止めることが重要です。これに対する一つのアプローチとして、メカニズムへの示唆を与えるような中間的な分子形質――たとえば遺伝子の発現量や代謝物の量――と関連するゲノム領域を調べることが有望です(FIGURE 3)。最近、私たちは遺伝子発現の重要なレギュレータであるマイクロRNAの量を規定するゲノム領域のカタログを作成しましたが4)、疾患関連ゲノム領域の知見が積み上がるにつれ、このような方向性の研究はますます重要となっていくものと考えています。FIGURE 1:ゲノムDNAの個人間での多様性が親から子供に引き継がれることで、親から子供に形質が継承される、遺伝現象が生じる。FIGURE 2:COVID-19感染者群と健常対照群との比較解析により明らかになった、重症化に関連するゲノム領域の一覧。赤線は有意水準を示し、この線より高いシグナルは統計学的に有意な領域を示す。FIGURE 3:遺伝子発現を制御するゲノム領域を同定し、疾患リスク関連領域とのオーバーラップを調べることで、疾患リスクの分子メカニズムに関わる遺伝子を絞り込む。iFremed Integrated Frontier Research for Medical Science Division
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