若手研究者PROFILE 2023_11
35/74

今後の見通し骨髄内の細胞間ネットワークを明らかにし、白血病治療や造血幹細胞体外増幅などの臨床応用を目指す■研究ポリシー私は血液内科医として、白血病などの悪性疾患や再生不良性貧血などの造血不全の治療に取り組んできました。その過程で、「造血はなぜ骨髄でなされるのか?」という根源的な疑問に興味を持ちました。骨髄の中には血球やストローマなどの様々な細胞が存在し、それらが互いにネットワークを形成して適正な造血がなされていると考えられており、そのネットワークの解明に取り組んでいます。私は臨床現場で生じた疑問について基礎研究を用いて解明し、やがてはその結果が臨床に還元されることを目標としています。33を感知して造血を再生するメカニズムが存在することを明らかにしてきました。骨髄の造血環境についてはまだまだ未知の部分が多いのが現状です。骨髄抑制ストレス後の造血回復の機序を明らかにすることによって、骨髄内のどのような細胞のどのような因子が造血を維持するのに重要なのかを解き明かしていければと考えています。そこで私たちは、ストローマ細胞や分化血球が造血幹細胞機能に与える影響をin vitroだけでなく生体イメージングなどのin vivoの系で解析することによって、骨髄内の細胞間ネットワークに関する知見を蓄積していきます。このような研究を通じて、白血病細胞がどのようなメカニズムで骨髄内において増殖するのかを明らかにし、白血病新規治療法開発の足掛かりにします。更に、造血幹細胞の自己複製や分化を司るシステムを理解することによって、造血幹細胞を体外で増幅する方法の開発に向けた知見を蓄積していきます。FIGURE 1:造血幹細胞が活性化すると表面に発現する分子が変化する。ESAMは著明に上昇することから有用な活性化マーカーとなる。FIGURE 2:骨髄に存在するILC2は骨髄傷害を感知し、GM-CSFを産生することによって骨髄回復を促す。FIGURE 3:骨髄内の分化した血球細胞やストローマ細胞ネットワークからのシグナルが、造血幹細胞の挙動に影響を与える。iFremed Integrated Frontier Research for Medical Science Division

元のページ  ../index.html#35

このブックを見る