若手研究者PROFILE 2023
11/76

今後の見通しセマフォリンによる免疫代謝を軸とした中枢神経系疾患の病態解明を目指して■研究ポリシー私は免疫内科医として、全身性エリテマトーデスや関節リウマチをはじめとした膠原病診療に携わる中で、同じ疾患でも多種多様な症状を呈する自己免疫疾患の病態解明に関わる研究がしたいと思うようになりました。特に、「病は気から」や「膠原病気質」などという言葉があるように、臨床でも、中枢神経系と免疫機能との関わりを示唆するような現象を実感する場面はよくあり、中枢神経系と免疫機能の関連について、分子レベルで解明し、自己免疫疾患や中枢神経系疾患の診断や治療に少しでも貢献したいと考えています。09我々の研究室では、神経ネットワーク形成に必須のガイダンス因子であるセマフォリン分子群1)がマクロファージの代謝を介して免疫応答を制御することを明らかにしました2)。そこで、セマフォリン分子群の一つであるセマフォリン6D(Sema6D)に着目し、ミクログリアによる免疫代謝制御機構を明らかにしたいと考えています。また、ミクログリアは認知症や多発性硬化症、パーキンソン病などの中枢神経系疾患の病態形成にも深く関与しており(Figure 2)、神経ガイダンス因子による免疫代謝を軸とした中枢神経系の恒常性維持機構の解明とともに、その破綻により生じる中枢神経系疾患の病態を臨床検体・情報も組み合わせながら明らかにし、これら疾患の診断·治療法の確立を目指したいと思っています。FIGURE 1:1910-30年代に発見されたグリア細胞は近年、神経細胞の回路形成や機能維持において重要な役割を担うことが明らかになっている。FIGURE 2:上図;これまで報告されたSema6D-PlexinA1/4シグナルの免疫機能。下図;ミクログリアにおいてTrem2/DAP12の機能異常が貪食能やシナプス形成に影響を及ぼし、様々な中枢神経系疾患を起こすことは報告されているが、Trem2関連分子であるSema6Dシグナルの関与は明らかになっていない。iFremed Integrated Frontier Research for Medical Science Division

元のページ  ../index.html#11

このブックを見る