若手研究者PROFILE 2022
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今後の見通しより高分解能、高精度なメタゲノム解析手法の開発とその応用に取り組む■研究ポリシー遺伝子の塩基配列を高速に読み出せる次世代シークエンサー(NGS)の技術革新は目覚ましく、大量のデータを容易に取得することが可能です。一方で、NGS装置の取り扱いやデータの解釈は難しいため、研究室では最先端の機器とノウハウを整備し、様々な研究者に実験・解析技術を提供しています(FIGURE 3)。また、既存のシーケンスアプリケーションでは明らかにできない、より高精度、高感度での解析については、実験・情報解析の両方の観点からメソドロジーの開発・改良も行っています。57から、各研究者があらゆる手法の原理を理解して使いこなすには時間を要するため、研究デザインから論文化まで分野横断的な研究支援を行い、研究のスピードアップに貢献しています。口腔や腸内細菌叢と疾患の関連性については数多くの研究がなされています。一方で従来は無菌と思われていた組織、血中や尿中にも菌叢が存在することが確認されつつ有り、近年注目されています。しかし、菌量が極微量のためコンタミネーションの影響を受けやすく、正しい微生物叢を解析することは困難です。また、現在の解析技術では各生物の属や種名の情報しか得られません。より正しく疾患のメカニズムを理解するためには株や塩基変異レベルでの区別が必要となります。そのため、より高分解能、高精度な解析手法の開発に取り組んでいます。さらに、感染症の流行を早期に検知する仕組みの開発も行っています。具体的には空気や下水といったヒトとかかわる環境中のメタゲノム解析を行い、網羅的な病原体の探索とそのゲノムを明らかにし、その結果を感染症対策に活かす取り組みを行っています。FIGURE 1:メタゲノム解析を用いた病原体探索のワークフロー。臨床検体から核酸を抽出し、網羅的にゲノム解析を行う。配列の相同性解析を行うことで、生物の種類と割合を明らかにする。FIGURE 2:日本人の腸内真菌叢解析結果高精度な真菌叢解析手法の開発を行い、その技術を利用して日本人の腸内真菌叢のパターンを初めて明らかにした。FIGURE 3:ゲノム解析支援に使用する機器の一覧(A) 使用可能な次世代シーケンサー(B) シングルセル解析装置iFremed Integrated Frontier Research for Medical Science Division

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