若手研究者PROFILE 2022
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今後の見通し頭蓋内脳波を用いた、運動や言語機能から時間の感じ方といった高次脳機能の解明への取り組み■研究ポリシー我々はてんかん診断の均一化と焦点探索、高次脳機能を保った治療を実現し、より多くのてんかん患者が日常生活を送れるようにすることを目標としています。診断の均一化のため、脳波や脳磁図と人工知能(Artificial Intelligence : AI) を組み合わせ、てんかんの自動診断に取り組んでいます。また、薬物治療難治例のてんかん発作の中には、原因となるてんかん焦点を特定し切除することで発作をコントロールできるものがあります。脳波や画像と組み合わせ、焦点の探索にも取り組んでいます。47の高いfunctional MRIと組み合わせ、異常な脳活動部位の特定を試みています(FIGURE 2)。てんかん患者の治療目標は、てんかん発作のコントロールにより日常生活を送ることにあります。てんかんの外科的治療に際し、高次脳機能を把握し保つことが重要です。てんかん治療目的で頭蓋内電極を留置した患者が、文字を読む、腕を動かすなどのタスクを行なった際の頭蓋内脳波を解析することで、言語機能や運動機能の部位の把握し2)、それらを避けた焦点切除を行います。最近では、より高次な脳機能の解明を試みています。例えば、時間の感じ方に関する研究では、朝や昼、夜といった時間感覚は脳の中でどのように表現されるのかを調べています。頭蓋内電極を入れた患者がドラマなどの映像を見たときの頭蓋内脳波をAIで解読し、約80%の精度で時間帯を推定しました(FIGURE 3)。また、時間帯を感じる脳の領域の特定にもAIモデルの解析および機械学習を導入し、取り組んでいます。FIGURE 1:位相と振幅の同期度合い(Phase amplitude coupling)という脳磁図の特徴とAIが脳磁図から自動的に抽出した特徴量を融合し、てんかんと健常の識別を行う。FIGURE 2:時間分解能に優れる頭皮脳波の発作間欠期てんかん性放電のタイミングで生じる脳の神経活動をfunctional MRIを組み合わせ、異常な脳活動部位の特定を試みている。FIGURE 3:朝と昼、夜の時間帯のラベリングがされた映像を見た患者の頭蓋内脳波から、AIを用いて朝、昼、夜の識別を行います。それにより、脳波から時間帯の感じ方の解読を試みている。iFremed Integrated Frontier Research for Medical Science Division

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