若手研究者PROFILE 2022
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今後の見通し画期的な診断システムや治療法の臨床応用で網膜血管疾患の失明をゼロに■研究ポリシー治療しても視力が回復しない患者さんを目の前にして感じてきた、「こんな診断システムがあったらいいな」、「こんな治療ができたらいいな」、という発想を大切にしています。課題を解決するために、臨床経験から得た独自の視点でシステム開発あるいは創薬の研究を続けてきました。近年、限られた資源のもとで高度かつ持続可能な医療の実現が求められています。患者・医療者の双方にとって有用な診断と治療の効率化につながる成果を臨床現場に還元し、医療の発展に貢献したいと考えています。43新たに開発した疾患モデル動物を用いて異常血管を正常化させる化合物探索に取り組んでいます(FIGURE 2)。視力を脅かす疾患は個人の生活の質に影響するのはもちろん、生産性の低下から社会全体の損失に繋がります。そのためライフステージごとの疾患の重症化を予防することが重要です。未熟児網膜症は世界的に増加している一方で、深刻な専門医不足から診療体制の効率化が求められています。私たちが構築した重症アラートシステムを診療支援技術として社会実装することで、重症化する早産児を効率良く見極め、適切に介入できます。その結果、視覚障害の回避に繋がると期待されます。一方、糖尿病網膜症の創薬研究では、すでにモデルマウスの異常血管を正常に転換させうる化合物の同定に成功しています。今後、創薬プロセスを進め、虚血を解消する治療方法の実現を図りたいと考えています。この治療法は網膜症にとどまらず、全身の虚血性疾患や癌にみられる異常血管にも応用できるかもしれません。FIGURE 1:バイタルデータだけで未熟児網膜症の重症化を事前判定し、負担の大きい眼底検査を減じる. 遠隔医療にも展開可能(特願2021-093588).FIGURE 2:独自に開発した糖尿病網膜症モデルマウスを用いた血管を正常化する創薬研究(US patent 10869465, 特開2019-33745).FIGURE 3:診断補助システムの構築と根治療法の開発を通じて、網膜血管疾患を原因とする失明を防ぐiFremed Integrated Frontier Research for Medical Science Division

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